秋の庭

髙橋ゆりこ

H14.8×W10cmクラフト紙・ポスカ[白]・消しゴムはんこ・水性インク
手紙
お変わりありませんか。すっかりご無沙汰していました。
前にお会いしたのはいつのことでしょう?
今年も残すところ、ふた月になりましたが、その間にいろいろなことがあったのではないでしょうか。
そして、これからもいろいろなことが続くと思います。けれど、もしかしたら、それは「いま」に限ったことではないのかもしれません。時間はあっという間に過ぎて、季節は秋です。
庭では、だいだい色や赤むらさき色の花が咲いて、風には微かに枯れ草の匂いが混じってきました。
庭を眺めながら、これからの日々が、せめて心の中では穏やかに流れていくことを願ってやみません。
またお会いしましょう。
それまで、どうかお元気で。 2020.10
少し“さき“のあなたへ
“さき“は過去・未来の両方を指す言葉として使われます。手紙に記した“さき“を過去と捉えるか、未来と捉えるか、それはこの作品をご覧くださった皆様に委ねます。
庭の景色を思い浮かべて描きましたが、作っているさなかは庭を眺める余裕がなく、作り終わってから、ようやっと実際の庭を眺めました。いつもの季節と変わらず秋の花が咲いていて、なぜか少しほっとしました。

コロナ見舞い申し上げます展

Commentators.

ささやき声ロゴ

「さき」の私と、「さき」の私と、それらの「さき」である「いま」の私が一度に集まったら、どんなふうだろう。はんこで押した形状が、それぞれ違いがあっても同じはんこであることは分かるように、変化していく自分を自分たらしめている要素は何なのか考えたくなりました。

ささき声ロゴ4

ピンク調の花が際立つのが秋の良いところと思います。消しゴムハンコならではの柔らかさがあり、見た人をほっとさせてくれます。

ささき声ロゴ3

「純粋な現在とは未来を侵蝕する過去のとらえ難い進行であり、実のところ、あらゆる知覚はすでに記憶である」−−−アンリ・ベルグソン『物質と記憶』

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